自家製干し野菜で食品ロスを削減!干し野菜で作るけんちん汁の深い味わい

ちょこっと切り残したお野菜を冷蔵庫に戻さずに干すと、いいことがたくさん起こります。
そんな干し野菜でけんちん汁をつくりました。

もう45年も前、初めて作ったけんちん汁

切り落した野菜の端切れ、皮の部分や根っこなども余すところなくいただけるけんちん汁。
食材を粗末に扱わない精進料理の基本が詰まった定番のレシピです。
そんなことなど何も知らない45年ほど前、僧侶の叔父の法要に行きました。
僧侶の方々の合同の法要に叔父も加えてもらったようです。

末席に母と座っていたら、遠くに著明な作家の方のお顔がありました。
その方が僧侶として修業時代、叔父とは兄弟弟子だったそうです。

声をかけていただき、その方の主催する人形劇団の一員になりました。

信州のお家で、初めて教わったけんちん汁。
「ふみちゃん、出汁はいらんのやで。野菜からええ出汁がでる。」
いやいや、なんか薩摩揚げらしき物が入っていたかすかな記憶があるのですが、、、。

それもそのはず、
以下、作家水上勉氏の著作から引用します。

寺でよくやったケンチン汁のようなものだが、私のは冷蔵庫をあけて、あるもの一切を、ばっさばっさ入れて煮込んでしまうので、名前は何とつけていいかわからない。それで勝手に無名汁と名付けている。

「土を喰う日々」水上勉 

本には「昆布を細切りにして」とありますが、いつも「出汁はいらんのやで」と言われていたことが強く記憶に残っています。

大根や人参、こんにゃくに芋、ごぼうやらキノコ類、種類が多くてまだ台所仕事に慣れない若い団員の私たちには切るだけで精いっぱい。
煮あがった汁に豆腐をにぎりつぶして入れるのもびっくり。
長野の厳しい冬にいただく具沢山の一椀は、お腹の底に沁みわたりこれだけでごちそうでした。

けんちん汁には食材を無駄にしない心が詰まっています

けんちん汁、料理名として誰もがご存じと思います。

もとは精進料理で、鎌倉時代に建立された建長寺(けんちょうじ)で作られていた「けんちょうじる」がいつしか「けんちん汁」になったと言われています。(他説あるようです)

大根や人参、ごぼうなどの根菜をごま油で炒めて豆腐を加え、しょうゆで味を調えたすまし汁です。

精進料理ですので肉や魚は入れずにお野菜だけで作ります。
根菜に芋、戻した干し椎茸、こんにゃくなどお野菜たっぷりで、具材から出る野菜の旨味が出汁となって昆布やだしの素を使わなくてもとても美味しく出来ます。

水上勉氏の別荘で初めて食べた無名汁、「ほんまや、野菜だけでこんな味がでるんや!」とお腹の底まで美味しさが沁みわたったのを覚えています。

尼僧の叔母がお仕えしたお寺では、尼寺らしくちょっと華やかに可愛らしくお野菜を切るのが常でした。
特にお正月などは人参を梅の型にくり抜いたものをたくさん作りました。
他のお野菜も盛り付けた時に縁起の良い形になるように切りそろえていました。

そんな時にでる野菜の切り端はけんちん汁の格好の具材となります。

しまつの心だけではないのです。
  (しまつする=節約する 倹約する ものを大切に使う 京都弁として知られる)
実際に皮や根に近いところも使うことで、お野菜のもつ奥深い旨味をまるごといただく満足感は他に代え難いものがあります。

けんちん汁は豆腐も必ず入れますね。
お野菜だけでなくタンパク質も摂れて栄養のバランスも優れている!

さて、この豆腐、にぎりつぶしてお汁に投入します。
けんちん汁をつくるまで、そんな使い方をしたことがなかったのでびっくりでした。

その謂れを教わりました。
「修行僧が豆腐をうっかり床に落としてしまった。
どうしようと思っていると、それを見ていた開山様が落ちた豆腐を拾い集めて洗い、汁の中に入れた」

調べてみると別の逸話もありました。
「ある日、門前に住む人が一丁の豆腐を禅師に寄進した。
禅師は一人で食することは仏様に申し訳ない、修行僧ともどもいただこうと典座(お寺の料理係)に渡した。
当時700人の修行僧に一丁の豆腐がどうすればいきわたるが試案の挙句、揉みつぶして入れた」

レファレンス協同データベース けんちん汁について

どちらもええ話やわ~!
前者からは食べ物への敬意、
後者からは食の平等を重んじる仏教の教えを感じ取ることができます。

現代版しまつのこころ 食品ロスの削減で
私たちも先人の知恵を受け継いでいくことができます

疫病や戦争が起こり、加えて異常気象が続き災害もひとたび起これば被害は甚大となり、世界の食糧も危ぶまれています。
そんな中「食品ロス」や「食品ロス削減」という言葉を聞かない日はありません。

「食品ロス」はまだ食べられるのに捨てられている食品のことです。
例えばスーパーの売れ残り、飲食店などでの食べ残しや何らかの理由で提供されなかった食材
家庭においては買いすぎて使い切れずに期限が切れて捨ててしまう、作りすぎて食べきれずに捨ててしまう、
皮を厚く向きすぎて食べられる部分を捨てている、、などです。

そのように捨てられている食品の量はどれくらいでしょう、
以下は2021年度の日本の食品ロスの数値を図に表したものです。

2021年度 食品ロスに関するグラフ 数値は農林水産省より

前年の2020年より1万トン増えています。(2020年は523万トン)

でも、2020年の食品ロスは、推計を開始した2012年以降で最少だったのです。
2020年は事業系食品ロスが前年度よりマイナス34万トン⤵ 家庭系ロスはマイナス14万トン⤵

上記グラフの2021年は事業系が1万トン増えていますが、家庭系はさらに3万トン減っています。

すごいことだと思います。
私たち一人一人の小さな行動が、ちゃんと数字に表れている!

ごみ半減をめざして施行された京都市の条例が「しまつのこころ条例」という愛称で呼ばれています。
現代版しまつのこころ「食品ロス削減」で私たちも先人のこころを受け継いでいかなくてはと思います。

食品ロス削減、しなきゃいけない!と私が思ったきっかけ

何年も前のこと、話題の切り干し大根のヨーグルト戻し(DRYandPEACE 考案)を作ってみて、今まで味わったことのない美味しさにびっくり!
しばらくたってDRYandPEACEの講座の1つ、「自家製干し野菜の作り方」を受講しました。

面白くて楽しくて、為になって・・・自家製干し野菜の魅力にすっかり虜になって現在に至っています。

その講座で衝撃の質疑応答がありました。
干し野菜と食品ロス削減について学んでいた時のことです。

「たかまさん、ゴミ焼却炉で何を燃やしていると思いますか?」
「えっ・・? ゴミです」
「実はね、水を燃やしているのです」

”水を燃やしている” 私にとっては衝撃の答えでした。

生ごみは可燃ごみに分類されています。
でも生ごみの約80%は水分なのだそうです。
ほとんど水。
この水を先に燃やさないことにはゴミは可燃にならない。

この一言から自分の出すゴミを見直しました。
ざっくりですが、ゴミを出す回数が半分に減りました。

河内長野のゴミ出しはシール制ですが、昨年のものがまだ余っています。
お恥ずかしい話ですが白状しますと、以前は年度末にはシールが足りなくなって追加購入したことがあります。

ゴミの分量と回数が減ると毎日のちょっとしたルーティンがとても楽になり、そのラクさ加減は想像以上のもので驚きました。
さらに、買い物をする時にどれだけゴミが出るか考えることもゲーム感覚で楽しいチャレンジです。

以下の図は「食品ロスは食品だけを失っているのではない」ことが説明されています。
とてもわかりやすいので紹介したいと思います。(自分の理解のためにテキストを加えています)

食品ロスで失うもの

「自分のお金払ったんだから、どうしようといいじゃん」
そんな考えがあったことをとても恥ずかしく思います。

図にも書き加えましたが、払ったお金を無駄にし、新鮮なうちに美味しく食べる機会を失い、おまけにゴミを増やして税金を無駄遣いしてた。

上記の図、左右の空白のところにも大きな損失があることを学びました。

購入前の左部分には、
・お野菜を作るのにつかわれた労力と時間
・水やエネルギー
・いいものを作って美味しく食べて欲しいという作った人の想い
・その想いを販路に乗せて運んだ人の労力やガスエネルギー など

廃棄の右部分には
・焼却炉で水分の多い生ごみを燃やすために使われるエネルギー
・そして多くのものやことを無駄にして、最後に増えるのはCO2 です
・焼却後の残渣を埋めるための土地には限りがあること

”食品ロスを減らす”…なにかたいそうなことのように思いますが、
誰もが毎日ものを食べて生きています。

誰にでも今すぐできること。
小さなしまつや工夫が食品ロス削減、エネルギーの節約、CO2削減にダイレクトに繋がっていると思うと、
にんじんのしっぽや大根の皮も愛おしく、美味しくいただこうと思うようになりました。

ゴミが少なくなるだけじゃない、干し野菜の大きな力と魅力

冷蔵庫がなかった時代、電気がなかった時代、食物を保存できるよう乾燥、塩漬け、燻す、発酵させるなど、人々は工夫を重ねてきました。

中でも乾物は塩漬け等に比べてとてもシンプルな「干す」という方法で保存できるようになるため、人々が食べつないで生きていくために不可欠の食材でした。

でも冷蔵庫が私たちの生活に登場してからは、「とりあえず冷蔵庫に入れておけば大丈夫」という習慣がついてしまったように思います。

その結果、しなびた大根や傷みかけたキャベツが冷蔵庫の奥に見つかったり。
また、入れすぎた冷蔵庫はより多くのエネルギーが必要です。

C02の削減が火急の課題である今の社会においてはエネルギーを節約し、冷蔵以外の手段でも食品を保存する工夫と知恵がある生活を模索しなければならない状況になっています。

市販の乾物や自家製干し野菜の魅力

ごみが減るだけではないのです!
市販の乾物はそのまま使えるものがほとんど。
皮を剥いたりすることがないのでまな板や包丁いらずで調理ができることが多く、洗い物もウンと少なくなります。\(^o^)/

自家製の干し野菜やドライフルーツは皮も楽しめます。

人参のしっぽ、大根のしっぽ、ちょこっと余ったお野菜は冷蔵庫に戻さず干して保存。
冷蔵庫もお野菜も人も嬉しい三方良し。

何より声を大にしてお伝えしたいのは…、
楽しくて仕方がない!!

家庭菜園は苦手な私ですが、干すことで野菜に時間を超えた命を育てている喜びが味わえるのです。
また、数時間、数日で表情を変えていく自家製の干し野菜の姿はとてもキュートで愛おしくたまりません。

プチトマト
葱 みかん 生姜
白菜 オクラ 人参 エノキ ツルムラサキ

この楽しさを1人でも多くの方に味わっていただけたらと思います。

干し野菜で作るけんちん汁

干し野菜は、にんじん、大根、かぼちゃ、エリンギ、れんこん、ずいきがありました。
お野菜の種類はなんでもいいと思います。
ちょこちょこ干したお野菜が量は少なくても色々あるととても重宝します。

干し野菜の戻し汁は捨てないでくださいね!
「出汁はいらんのやで」と言われたけんちん汁、干し野菜から出るお出汁だけで十分です。

戻しはじめ
戻った干し野菜

朝のうちに鍋に入れて時間をかけて戻すとよりふっくら美味しく戻ります。

戻った野菜をごま油でさっと炒め、戻し汁を入れて淡口のお醤油で味を調えました。
最後にお豆腐を手で握りつぶして入れます。厚揚げでも美味しいです。

干し野菜のけんちん汁

「自分でお野菜を干すなんて、なんだか大変そう」
ぜんぜんそんなことはありません。

切り残したお野菜を冷蔵庫に戻さず小さなザルや網に並べるだけ。
お家の中で十分干すことができます。

どれくらい干せているか、毎朝起きるのが楽しみになりますよ。
そしてその小さな行動が世界の未来を作ることにつながるなんてすばらしい。

お1人お1人のお時間のご都合に合わせて「自家製干し野菜の作り方」のレッスン致します。
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