初めての自家製干し野菜:作り方から保存法まで完全ガイド 

自分で作る干し野菜、興味があるし、簡単だと聞くけれど、いざ始めるとなると何から手をつけていいのかわからない、そんなお声に応えます!

誰でもどこでもできて楽しく、メリットがいっぱい。

今、目の前に大根とスライサーがあればすぐに始めることができ、それだけで知らず知らずのうちに今の社会が抱える大きな問題、食品ロス削減や世界の食糧問題にも貢献できてしまう。

そんな自家製干し野菜作り、始めてみましょう。

目次

自家製干し野菜の概要: 干し野菜の長所と短所

干し野菜ってどんなもの? 干し野菜の特徴

お店では切り干し大根や少し太めの割り干し大根、輪切りの乾燥大根などが売られていますね。
煮物にする食材としてお馴染みの食品です。

切り干しや割り干しは大根を細く切り乾燥させて水分を抜いたものです。
乾燥野菜の一種です。

いつも行くスーパーには乾燥させた大根くらいしか見かけません。
デパートや専門店に行けば乾燥ほうれん草や人参、きのこなどいろいろな乾燥野菜が売られていますが、少量で結構なお値段が付いています。

でも~、実はほとんどのお野菜はお家で自分で作れるのです!
大根人参はもちろんのこと、かぶら、かぼちゃ、ピーマン、きのこ、ごぼう、れんこん、青菜に白菜、ネギや玉ねぎ、地元でたくさん採れるお野菜、ほぼなんでも干すことができます。

それもとても楽しく簡単に!

干せばいつものお野菜が手作り乾物の仲間入りです。
”乾物”は食品から水分を抜いて、常温で6ヶ月以上保存ができるものとされていますが、
それがホイホイお家で出来ちゃうのです。

自家製干し野菜は、実に種類豊富なお野菜が冷蔵庫に頼らずに常備できる優れた食材です。

自家製干し野菜を作ると起こるいいこと

毎日のご飯ごしらえの後、切り残したお野菜を「明日使おう」と冷蔵庫に戻す。
実際は1週間後に萎びた姿で、またはすっかり色が変わって使えずもったいないと思いながら捨ててしまうーそんなことが度々ありました。

でも「お野菜自分で干せるんだ」ということを学んでからはお野菜を捨ててしまうことがなくなりました。
3cm、5cmほど残った人参を冷蔵庫に戻さず、そのまま切って小さなザルに置くだけ!
水分が抜けて乾いていく姿を見るのも楽しい。

残ったお野菜を冷蔵庫に戻さずに干す「ちょこちょこ干し」が習慣になると…、

💮あら、ゴミが明らかに減りました。ゴミ出しの回数が半分になったのです。
(これは自慢にはなりませんね、いかにもったいないことをしていたかの証明です。><;)

💮みんなのゴミが半分になったらゴミの収集車が軽くなりのガソリンも節約できるのではないかしら?

💮冷蔵庫にスペースの余裕ができ、よく冷えるので温度を少し高めに設定しなおしました。
 これで電気代節約!

💮少人数家族では食べきれない大きな野菜も、干しておけばいつでも少しづつ色んなお野菜を食べることができ、結果栄養のバランスが上手くとれ、何よりお腹の調子がよくなりました。

💮乾物一般に言えることですが、乾燥によって味が凝縮され、生のお野菜にはない深い味わいが生まれます。
  市販の物だけでなく家族や自分が好きなお野菜を自分で干すことができるとオリジナルの味を作ることができます!

💮干し野菜の調理は時短、節水、節電レシピ
  すでに皮が向かれていたり、刻まれているので調理にまな板包丁がほとんど必要ありません。

💮近年の異常気象、まさかの非常事態は今この瞬間にやって来るかもしれない。いつもの日常は非常事態と隣り合わせです。自家製で干し野菜が作れると非常時にも普段食べ慣れた食材でいのちをつないでいくことができます。干し野菜があると、いつもの食卓が豊かになるだけでなく、非常時の心強い備えになります。

自家製干し野菜のデメリット

良いことづくめの自家製干し野菜ですが、自家製故のデメリットもあります。

市販の乾燥野菜は機械で干されています。
満遍なく完干しにされていて、干しムラがありません。

一方、自家製干し野菜は天日干し、または室内干しですので機械乾燥のように完璧に干し上がらず、干しムラができることがあります。 その干し切れていない部分からカビが発生することがあります。

またビタミンCは水に溶ける性質で日光や熱に弱いので成分が失われやすい。
天日干しで増えるビタミンもあるのですが、ビタミンCを摂りたい時はフレッシュフルーツなどを献立に入れるといいでしょう。

自家製干し野菜: 干す前の準備

干す前の準備:野菜の選択

初めての手作り干し野菜、どんなお野菜が向いているのだろう? 「なんでも干せる」といっても選択に迷いますよね。

初めての干し野菜体験講座では大根を使います。
季節によって味は異なりますが、いつでもスーパーで買える、大型野菜なので冷蔵庫に使いきれなくて残っていることも多い、切って並べて簡単に干せる、等々の理由で大根を選んでいます。

以下、状況に応じて選択の参考にして下さい。

ちょこちょこ干し

その日の調理で残ったお野菜を冷蔵庫に戻さず、ちょんちょんと切って小さなザルにぱらっと広げるだけ。
朝が来てお天気が良ければベランダに出してやります。
何を干そうかと構えずにすみ、知らず知らずの内に多種の干し野菜が出来てしまいます。

旬のお野菜を干す

旬のお野菜は値段も手ごろでついたくさん買い込んでしまいがち。また旬の大型野菜などはそのまま全部いただければよいのですが、少人数家族だと買うのに躊躇してしまうことも。
「干す」ということを知っていれば迷わず大根1本、白菜一玉を買って、旬のお味をたっぷりいただいてから食べきれなかった分を干してみて下さい。
旬のお味が凝縮された干し野菜を季節を超えて味わうことができます。

干しやすいお野菜

〇初級
大根、人参、かぶら、かぼちゃ、シメジなどのキノコ類が干しやすいです。
切って水分を取って干すだけ!キノコ類は石づきをとってほぐすだけ。

〇中級
少し慣れてきたらレンコン、ごぼう、ナスも是非干してみて下さい。
干す前にアク抜きしますが、干しレンコンや干しごぼうがいつもあるととても重宝します。

湯通ししたり手間がかかりますが菜っ葉類も干し野菜に加えたいですね。

〇上級
水分の多い野菜は干し野菜に不向きと言われています。
でもきゅうりのセミドライ(半干し)は美味しいですよ。
トマトなどもちょっとした工夫で、市販では高価なドライトマトが出来てしまいます。

じゃがいもはそのままで日持ちすることから干し野菜にすることはあまりないようです。
でもインカの目覚めなどすぐに目が出てしまう品種でトライしたいですね。
じゃがいもは茹でてから干します。

干す前の準備:道具

切る道具

まずは包丁とまな板。
これはどこのお家にもありますね。

包丁で切る以外にスライサーがあると便利です。
厚みを3mmくらいまで調節できるものであればよりいいですね。

切り干し大根を作りたい時は千切りピーラーやきんぴらピーラーがあるとしゃっしゃと早く細切りができます。

スライサー
きんぴらピーラー
ピーラー

干し野菜の楽しさにハマると便利そうな様々のスライサーや千切り器に目移りしますが、
まずはまな板、包丁、ピーラー、スライサーがあればOK。
ピーラーがなくても包丁だけで自分の好きな太さ、厚みに丁寧に切るのも楽しいものです。

水分を取る布巾 干す前にひと手間かけると上手くいく

お野菜を切ったらザルに並べるだけ! なのですが、
その前に大事な工程が実はあるのです。

切ったお野菜の水分を取る。
それぞれのお野菜が持つ水分の多少で異なりますが、このひと手間が成功のカギとなります。

少しのお野菜なら片手できゅっとペーパーでふき取るだけでいいのですが、
ある程度の量になると布巾やキッチンペーパーの上に野菜を並べ、さらに上からペーパーで押さえてお野菜の水分を取ります。

晒しと洗えるキッチンペーパー

写真はキッチンペーパーですが、洗えて何度か使えるタイプのものを使っています。

お野菜拭き取り専用の布巾を準備するといいですね。

干す道具

さて、いよいよ干すのに必要なザルです。
”ザル”と言っても”ザル状”のものであればいろいろなものを活用できます。

私がちょこっとのお野菜を干すときに重宝しているのが100均で買った園芸用の篩。
裏ごし器も目が細かいので干すと糸のようになってしまうエノキなどに便利です。

篩と裏ごし器
底に割りばしを置く
焼き網

裏ごし器は底に隙間がないので割りばしなどを置いて空気の通りをよくします。

オーブンやグリルの焼き網も、大き目の食材を置いて干すことができます。

そして竹ザル。
新しく買い求めるときは、ご家庭のスペースにあった大きさのものが良いでしょう。
写真は直径30㎝と20㎝のザルです。
小ぶりですがお日様と風通しを求めて移動するときに、我が家のスペースにはこれくらいが丁度いい。

竹ザル

竹製でなくても大丈夫です。大量に切り干し大根作りたい時などは100均のA4ファイルが入るプラスチックのバスケットも便利です。

A4ファイルバスケット

干しあがって網目から落ちてしまわないようにガーゼを敷いています。
水蒸気を通すクッキングシートでもOK。

また、ザル状のものでなくても活用できます。
写真は洗濯物のピンチハンガーにつるしたり、針金のハンガーを曲げて作ったものにぶら下げたり。

ピンチハンガーに葉物をつるす
針金ハンガーを曲げて割り干し大根をぶら下げ

ある時、他のお家で干していてザルが足りなくなったことがありました。
ストッキング状のネットを深皿にかぶせて応急のザル。

深皿と水切りネット

お家にあるものでいろいろ工夫してみて下さい。

あると便利な干す道具

なんといっても写真のような干し網が便利です。

干し網

「万能干し網」「一夜干しネット」「平干しネット」等の名称で売っています。
中は3段になっていて省スペースで干し野菜を作ることができます。

1000円前後の物は大きさ(20㎝×30㎝ 高さ40㎝)で扱いやすく移動も簡単です。
100均でも売っていますがファスナーが1本で出し入れしにくく、写真のような大きく開くダブルファスナーの物がいいと思います。

私は持っていませんが、写真のような網の蓋が付いたザルも素敵ですね。

雨が続く日の助っ人

せっかく干したのに雨の日が続いてしまった。
ちゃんと天気予報見なくちゃなあ、と思うことが何度かありました。

室内で乾燥していて天候の影響を受けないのであればほぼ大丈夫なのですが、それでも湿気は忍び寄ってきます。
そんな時の助っ人さんが扇風機やサーキュレーターです。

電気エネルギーを使うことになりますが、雨が続いて干したお野菜がいっぺんにしんなり元気がなくなっているときは心強い味方になってくれます。

サーキュレーター

扇風機であれば側面から、サーキュレーターであれば真下から風を送ります。

干す場所

干す場所は日当たりの良い軒下や縁側、ベランダがあればいいですが、
室内でも大丈夫です!

交通量の多い道路に面していて排気ガスがかからないかなあという心配が多々あると思います。
日の当たる窓際があれば室内干しでも全く問題ありません。
天候に左右されることなく干し始められるのも室内干しの利点です。

ただ加湿器の使用はご注意ください。
窓ガラスもUVカットのものはお日様の恩恵を受けられないので要注意です。

キッチンなどの湿気が多い場所は避けてください。

適した季節 

梅雨の季節を除き、どの季節でも干し野菜を始めることができます。

秋から冬にかけて湿度が最も低くなる時期は干し野菜に最適です。
この時期はお肌や手が乾燥してしまってカサカサになりますね。
それと同じです。手がカサカサになるのは困るけれど、干し野菜には適した季節です。
干し初めの日は晴れた日が2~3日続いた時が良いのですが、冬は晴れが多く干し野菜に適した季節です。

降り注ぐ真夏の太陽も、干し野菜の強力な味方となります。
水分の多い夏野菜やジューシーなフルーツには夏の強い日差しがぴったり。
数時間で干し上がることもあります。

天気や時間

どの季節でも、「ああ、今日は洗濯物よく乾きそうだ!うれしいな!」と思う時は干し野菜の干し始めにもいい日です。
そんなお天気が数日続くかチェックしてくださいね。
干し始めだけは良いお天気の日を選び、途中から室内干しに切り替えてもOKです。

私はお天気の良い日にベランダで天日干しにし、夕方取り入れ、2日目からは室内干しに切り替えることがよくあります。

干す時間は屋外であれば午前中から3時過ぎくらいまでがいいでしょう。
屋外に出した場合は夕方室内に取り入れます。

干し方の基本 切り方や下処理の方法

では実際にお野菜を干してみましょう。
基本は切って並べて干すだけ!誰でも今すぐできます。

でも初めての干し野菜、上手く干したいですよね!
ちょっとだけコツやポイントを知っていると仕上がりが断然違ってきて、「\(^o^)/ 次は何を干してみようか」と楽しくなります。

切って干すだけ 大根と人参

大根や人参、かぼちゃ、玉ネギ、きゅうり、きのこ類など、ほとんどの野菜は切って干すだけ!

初めての自家製干し野菜、比較的干しやすいお野菜の種類と切り方・干し方の例をお伝えします。

花切り大根

大根を輪切りにして干したものを「花切り大根」と言います。干し上がると本当にお花みたいにひらひらとして綺麗です。

3mm前後の厚みで輪切りにします。
あまり厚みがあると干し上げるのに時間がかかり、最初は3mm前後が干しやすいでしょう。

慣れてくれば使う料理に応じて形や大きさを変えて楽しんでくださいね。

水気を取ります。

ひと手間かかりますが、ここが上手く干し上がる大事なポイントです。

何度か洗って使えるキッチンペーパーや専用の布巾があるといいですね。

重ならないように並べます。

重なっていなければ、目一杯並べてOK!
干し上がっていくとすぐに小っちゃくなり、スペースができます。

一日に一度は表裏を返してください。

花切り大根の出来上がり。

季節や天候、湿度によってかかる日数は違ってきますが、数日から1週間~10日ほどで干し上がります。

セミドライ(半干し)にしたい時は半日から1日干して調理に使います。

また、「干しすぎ」ということはありません。
水分がより抜けて、日持ちが良くなります。

     

割り干し大根

大根を縦割にして干したものです。
スーパーでも見かけますが、自家製だと好みの太さ、長さで作ることができるのも楽しみのひとつ。

一本分の長さでは家庭では切りにくいので、適当な長さに切ってから縦に平たく切ります。

平たい板のような大根をさらに縦に切り目を入れます。上部まで切り離さずに割れ目を入れます。

上割れ目をハンガーなどにひっかけて干すと省スペースで干すことができます。

中々ユーモラスな風景です。


スーペースがあれば一本一本切り離して並べて干します。

切り干し大根 

お馴染みの切り干し大根ですが、お家で作ると、好みの太さ、いろいろな太さで作ることができます。

千切りピーラーやきんぴらピーラーを使うとあっという間に切ることができます。

もちろん包丁で好みの太さ長さに丁寧にに切るのもいいですね。

少し太めに作ると、市販の切り干し大根より何倍も美味しく煮物が炊けます。

反対に細くすると糸のようなふわふっわの美しい切り干し大根が出来て、サラダに美味しく使えます。

どの自家製干し野菜にも共通するポイント、
干す前に水気を取ります。

干し始めはかなりスペースを取りますが、できるだけ広げて干してください。

たくさん干すときは写真のようなA4ファイル整理用ののプラスチックのカゴ(底もかご状になっている物)を重宝しています。

干し上がり いろいろな形 太さの干し大根
花切り 紅大根 割り干し 
太目の切り干し

干し人参

人参も大根と要領は同じです。
輪切りにすると可愛い花切り人参に。

ただ、人参は皮を剥いてから干します。
皮の近くにポリフェノールがたくさん含まれ、乾燥や温度によって色が褐変します。
食べても支障はありませんが、見た目で捨てられがちなので、皮はスープなどに。
私は皮は別に干しています。

切って干すだけ かぼちゃ きゅうり 玉ねぎ 

かぼちゃ

かぼちゃは種とワタ、水分の多い部分を取り除いてスライスし干します。
とても干しやすい野菜なので少々厚め(5㎜~7㎜くらい)でも大丈夫でしょう。
早く干したい時は薄めにきります。
ワタの部分は甘く美味しいのでポタージュなどに、種も殻ごと干して中の緑の種が食べられます。
(ミックスシードなどに入っていますね)
干す前に水分を取る・重ならないように並べる、等は同じです。

干し始めと干し上り。(手前は人参)

きゅうり

3mm前後に切って水気をよくとり、重ならないように並べて干します。

水分の多い野菜なので完干しになるととても小さくなります。
セミドライ(半日か一日程度)にして水分が少し抜け味が凝縮されたものを中華炒めなどにするとおいしいです。

玉ねぎ

玉ねぎは輪切りでOK。ほぐさなくても大丈夫ですが水分の多い野菜なのでよく水分を取ってから並べます。

室内では匂いが強く、季節によってはゴキ君に狙われますので基本屋外で干した方がいいでしょう。

乾いてきてスペースに余裕が出来たらほぐしてもいいでしょう。

乾いてからもその甘さに惹かれてか、アリさんが寄ってきます。
虫の入りにくい籠に入れて、中空につるせるものが良いと思います。

干し上り。
甘みが凝縮されて、水分が抜けているので火の通りが早く、ちょっと玉ねぎがほしい時、まな板も包丁も要らずすぐに使えてとても重宝します。

きのこ類

シメジやエノキも干すと風味が増してとても美味しくなります。
干し方もほぐして並べるだけ。
生を調理する時と同様に、なめ茸などを除き市販のキノコ類は洗わないでくださいね。
生椎茸も干せますが少々工夫が必要です。上級向き。丁寧に作られた市販の干し椎茸の旨味には及びません。

シメジ
石づきを取り、ほぐして並べるだけです。

前を通る度、良い香りが漂ってきます。


左、エリンギです。
縦でも横でも好きな形に切って並べます。

右はエノキ。石づきを取り、なるべく細くほぐして並べます。

写真ではエノキを直接アミに置いていますが、干している途中は頭の部分がザルや籠の目に入りこんでしまいますので、クッキングシートを敷いた上に置くといいでしょう。

マイタケやヒラタケも同様です。ほぐして並べるだけ。とても簡単で失敗が少ないです。

干し上がり
手前左からエリンギ マイタケ
中央シメジ 向こうエノキ

アクを抜いて干す

ナスやごぼうや蓮根などアクのある野菜は干す前にアクを抜きます。
切った後、水や酢水に15分ほどさらしてから干します。

水や酢水にさらす
よく水分をふき取る
重ならないように並べて干す

干し上り
干したナスは噛み応えがあり、いつもとは違う食感で存在感があります。

レンコンやごぼうも水にさらしてから水分を取り、重ならないよう並べて干します。

根菜は水分が少なく干しやすいお野菜です。
干しておくと五目煮やきんぴら、筑前煮などにちょっとお野菜足りないなあと思う時、皮を剥いたり切ったりしなくてすぐに使えてとても重宝します。

さっと湯通しして干す

小松菜などの葉物類、レタスや白菜、ブロッコリなどはさっと湯通ししてから干すと比較的色が褪せずに干し上がります。

1-2枚づつさっと湯通しします。
葉にもよりますが、レタスなら「しゃぶしゃぶ」の”しゃぶ”くらい1~2秒でいいでしょう。

水気を切ります。

やはりよく水気をふき取って

葉を一枚一枚ピンチにつるすと省スペースで干せます。もちろんザルでもOK。

干せて来たら時々葉をそっと広げてやります。

短時間で干せると色がよく残るようです。
干し始めは天候を選ぶか、扇風機の風を当てると良いでしょう。

小松菜、白菜なども同様にさっと湯通ししてから干します。
写真はブロッコリを10秒ほど湯にくぐらせてから干したものです。色がよく残っています。

干し野菜の保存

保存方法、容器と場所

自家製の干し野菜は市販の物とは違い、干しむらが出てしまうことがあります。
ピーマンやプチトマトなど内側にくるっと丸まってしまい、中に湿りが残っているまま密閉容器に入れるとカビが生えてしまいます。

自家製の干し野菜は密閉容器に入れず、紙箱など通気性のあるものに保存したほうがいいように思います。

お菓子の箱
紙箱での保存例

私は大き目の三段干し籠がそのまま保存場所のようになっています。

三段かご

この三段かご、電気エネルギー要らずの冷蔵庫、その名も乾蔵庫と名付けています。
冷えはしないけど、太陽の光と風の力で、冷蔵庫にお野菜を入れておくよりずっと長く持ちます。
時にはある種のビタミンも増えて、これは冷蔵庫にマネできないでしょう!と思っています。

もちろん、冷蔵や冷凍も出来ます。
ジップロックに入れて空気を抜き、保存します。

保存期限

完干しになり、通気性の良い状態で保存されている干し野菜は6ヶ月以上に及び保存できます。
乾物が防災食に適している所以ですね。
実際には年月を超えての保存も可能です。

ただ、やはり梅雨時の多湿には弱く、干しムラからカビが生えてしまうことがあります。
梅雨前に一旦使い切り、真夏の太陽の時期を待ってまた作り始めてください。
あるいは冷凍保存などに切り替えて保存してください。

防災食として優秀な干し野菜ですが、日頃使ってまた補充するというローリングストック法で、仕舞い込まずに普段の献立に取り入れて使うのがポイントです。

自家製干し野菜 料理への活用のポイント

干し野菜調理の利点

乾物料理と言えば高野豆腐やひじきの煮物が思い浮かびますね。
自分で作る干し野菜が加わると毎日の調理の幅がグンとひろがります。
また切ったり皮を剥いたりすることが少なく、その便利さに驚くばかりです。

💮料理の巾が広がる!
 乾物と言えば煮物? 
 いえいえ、和洋中からエスニックまで、工夫次第で様々な料理を作ることができ、干し野菜クッキングは料理
 の巾をぐ~んと広げてくれます。

💮時短 節電 節水できる!
 乾物や干し野菜はすでに切られていたり皮が剥かれているので、包丁まな板要らずです!
 便利なだけでなく洗い物も少なくなり、結果、時短と水の節約になります。
 生から火を通すより早く煮炊きができるものもあり、加熱時間も短くなり節電に繋がります。

 乾物や干し野菜は戻すのが面倒? 
 時間がかかるものもありますが手間はかかりません。\(^o^)/
 切り干し大根や切り干し人参は15分~20分ほどで戻りますし、パパっと和え物やサラダが出来てしまいます。
 また、数時間前や前日から戻しておけばその時間を先取りすることができ、戻し時間をスキップして調理を始めることができます。

💮干し野菜レシピで栄養バランスがとれお腹も快調
 かさが減っている分だけ干していないお野菜より比較的量を食べることができ、食物繊維がしっかり摂れます。
 乾物や干し野菜以外の食材にちょっと足してみて下さい。
 「おみそ汁の具、ちょっと足りないな」という時や、カップ麺に干し野菜を少し足すだけで栄養バランㇲがグンとよくなります。

調理への活用方法のポイント

戻し時間

汁物、炊き込みご飯、煮物など、汁気が多い物の調理は事前に戻さなくてOKですが、厚みや食材の種類によっては20分ほど浸しておくと、早く柔らかくなり煮炊きのエネルギーの節約にもなります。

炒める場合も20分ほど戻して水を切って炒めます。または少量の水と他の水分の多い食材から水分をもらいながら蒸し焼きにし、火が通ってからジャッと炒めます。

前項にも記載しましたが、数時間または前日から戻しておくのもおすすめです!
時間がかかるように思いますが、実際は時間を先取りし、ストレスなく調理を始めることができます。

他の食材と合わせる

食材のちょい足しに干したお野菜があればとても便利です。
干したきのこなどがあれば旨味がグンと増し、味がワンランクアップ!
いつものレシピに干し野菜をちょい足し!で調理の巾が広がります。

水以外の水分で戻してみる

乾物は水で戻すだけでなく、水分があれば戻ります!!

ヨーグルトに浸して冷蔵庫で一晩

乾物がヨーグルトの旨味と栄養を吸い込みます。
乾物の3倍量でほぼヨーグルトは吸い込まれます。

ドライフルーツなどヨーグルトも楽しみたい時はヨーグルトの量を増やしてください。

 

豆腐の水分で切り干しや干した青菜を戻すと、豆腐の水切りなしで白和えができます。

戻し時間は30~40分。大きさや種類によって戻り具合を見ながら。戻ってから味をつけます。 

果汁100%のオレンジジュースで戻す。

10gほどの切り干し大根や切り干し人参にジュース50㏄くらい。戻り具合を見ながら適量です。
ワカメなど海藻を加えると食物繊維が摂れます。

トマトジュースで戻す。

濃い目のものがお勧めです。
冷蔵庫で一晩。トマトの旨味を乾物がたっぷり吸い込みます。
干し大根、きのこ、干し野菜ではないですが煮干しや高野豆腐など、お好きなハーブミックス、チーズ、パスタなどを合わせて加熱調理してください。(キノコは必ず加熱調理!!)

 ピクルス液や合わせ酢などにつけて戻す。

ピクルス液などに戻さずにそのまま漬けると、生のお野菜よりもギュッと酢を吸い込んでしっかりと味がつきます。水分が出ないのでピクルス液も再利用できます。
厚みや種類によりますが3~4時間で漬かります。三杯酢、酢醤油なども同様。

 生のきゅうりやかぶらなどに塩をして野菜から出た水分で戻す。

生のきゅうりと切り干し大根や干しかぶら、生のかぶらと干した柿、干した梨など美味しいです。

 卵液で戻す。

市販のカットわかめなど、戻しすぎにならずワカメの食感が残る卵焼きができます。

ツナ缶を使ってサラダを作る時、缶汁で切り干し大根などを戻します。
缶汁も捨てずに美味しくいただけます。ノンオイルの物をお使い下さい。

※水以外で戻す方法は DryandPeace の 「乾物マジックレシピ」を参照しています。

調理の例

炊き込みご飯

干したサツマイモ 干し大根 干しきのこや干し野菜を米と一緒にお好みの味で炊きます。
市販の炒り豆を入れても美味しい。

あらかじめ戻す必要ななくただ炊飯器に入れるだけ!
バリエーションは無限です。

けんちん汁

写真は花切り大根、割り干し大根 干し人参 長ネギかぼちゃ
他にあればどんな干し野菜でも
油揚げ、木綿豆腐を崩して入れています
お味は、ごま油 淡口醤油 山椒等薬味

胡麻をたっぷり降れば利休汁に、豚肉を加えて豚汁に

汁物に加えるときもあらかじめ戻す必要はありませんが、時間に余裕をもって戻すと干し野菜から旨味がじっくり出て出汁要らずです。煮る時間の節約にもなります。

切り干し大根と切り干し人参のエスニック和え

切り干し大根と切り干し人参をオレンジジュース(果汁100%のもの)で20分ほど戻したものをナンプラーと唐辛子、胡麻油、レモン汁で和えます。
またはお好みの「食べるラー油」で和えるのも簡単で美味しいです。

写真は干したきゅうりも入っています。

たっぷりいただいてお腹も快調!

自家製切り干し大根の煮物

よくある煮物かと思われるかもしてませんが、一度手作りで干した切り干し大根を炊いてみて下さい。 少し太めがお勧め。

その滋味あふれる美味しさにびっくりします。

薄揚げの代わりに干し湯葉をさっと揚げたものを合わせています。

そうめんチャンプルー

キャベツ 白菜 人参 オクラ えのき つる紫 
でそうめんチャンプルー。
炒め物は他の生のお野菜や材料から水分をもらうか、フライパンにに少しの水や出汁を入れて蒸し焼きにし、柔らかくなったら油を足し味をつけて炒めます。

生のきくらげを足しています。

ピクルスでサラダ寿司

干したかぶらと干し紅大根のピクルスを使って酢飯のサラダ風を作ってみました。

干し玉ねぎ、ミックスシード、干しエビ加えて、味付けはピクルス液。

ドレッシングは柚子の絞り汁とみかんの果肉を加えたフレンチドレッシングです。

かぶらの一塩と干した柿の和え物

蕪と柿の和えたのが大好きです。

生の蕪とスライスして干した渋柿を一緒に袋に入れてもみもみするとかぶから出る水分で柿が戻ります。

かぶの旨みと塩、柿のねっとりした甘さでかなり美味しいです。\(^o^)/

干しビーツのピクルス

カラッと干し上がったビーツ。

ピクルスにして半日で美味しく漬かりました。

刻んでクリームチーズと合わせ
バゲットにたっぷりのせて。

干し野菜の健康効果

乾物や自分で作る干し野菜を毎日の食卓に取り入れると栄養バランスが整い、とりわけ食物繊維がよくとれるようになります。

この章では市販の乾物や干し野菜の健康効果についてお伝えします。

乾物や自家製干し野菜の栄養価 

「5大栄養素」という言葉をお聞きになったことがあると思います。
体を作るたんぱく質、エネルギーになる炭水化物(タンパク質もエネルギーに使われる)、やはりエネルギーになったり細胞膜などを作る脂質、体の調子を整えるビタミンとミネラルで5大栄養素です。

そして近年は食物繊維の大切さがよく知られるようになりました。
もともとは炭水化物に分類されるものなのですが、昔は身体に消化吸収されないものとして隅に追いやられていた食物繊維。
これが実はとても重要な栄養素であることがわかり、脚光を浴びるようになりました。

お腹の調子を整えてくれるだけでなく、血糖値の急な上昇を抑える上にコレステロールの吸収まで抑えてくれる。栄養が偏りがちな現代の食生活には無くてはならない、でも不足しがちな栄養素と言われています。

市販の乾物で、実はこの6つの栄養素(タンパク質・炭水化物・脂質・ビタミン・ミネラル・食物繊維)が十分に摂れてしまうのです。

市販の乾物を栄養素別に分けてみました。

エネルギーになる主食(炭水化物)が摂れる市販の乾物

米 オートミール スパゲティ ショートパスタ クスクス 乾麺 ビーフン ライスペーパー など

体を作るタンパク質が摂れる市販の乾物

高野豆腐 麩(グルテン) 豆類 煮干し ナッツ類 など

エネルギーとなる脂質が摂れる市販の乾物

大豆 落花生 ナッツ類 胡麻

身体の調子を整えるビタミン・ミネラルが摂れる市販の乾物

切り干し大根 割り干し大根 干し人参 ミックス乾燥野菜 干し椎茸 煮干し 海藻類 
ナッツ類 ドライフルーツ など

※水溶性のビタミンCは乾燥と熱によって失われます。

栄養が偏りがちな現代の食生活には無くてはならない食物繊維が摂れる市販の乾物

切り干し大根 割り干し大根 干し人参 ミックス乾燥野菜 干し椎茸 かんぴょうなどの乾燥野菜キノコ類
乾燥ワカメ 昆布 ひじき 寒天 刻み昆布 とろろ昆布 海藻サラダミックスなどの海藻類
豆類や高野豆腐などの大豆製品
ナッツ類 ドライフルーツ 

米や穀類を乾物に含めると、市販の乾物からしっかりと炭水化物が摂れますね。
大豆加工品や豆類からは植物性タンパク質が摂れます。

胡麻を普段の食事に取り入れたり、おやつにナッツを食べると良質の脂質も摂れそうです。

ビタミンやミネラル・食物繊維も乾燥ワカメ・煮干し・椎茸・ナッツ・ドライフルーツからたっぷり摂れそうです。でもちょっとお野菜の類が少なくないですか?

いつも行くスーパーで買えそうな干し野菜は干し大根やみそ汁用のミックス乾燥野菜くらいです。

ビタミン・ミネラル・食物繊維が豊富なお野菜。
売り場には毎日新鮮なお野菜が、数えきれないほどの色々なお野菜が売られています。
その中から干してあるのが干し大根だけではもったいない!

自分で好きな干し野菜を作れたら、さらにバランスの取れた栄養価の高い食事ができるとは思いませんか?

市販のものに加え、まだまだ売られていることの少ない干し野菜を、お家で作ればさらに栄養のバランスは素晴らしいものになるでしょう。

干し野菜は食物繊維の宝庫です。
干されたお野菜はは生よりも嵩が減り、その分生で食べるよりたくさん食べられるのですね。
非常時などお腹の調子を整えるのが非常に困難な状況でも、身近にいろいろな干したお野菜があれば食物繊維をしっかりと摂ることができます。

干し野菜作りのQ&A:よくある質問FAQ

Q:曇りの日に干すとどうなりますか?
 干し始める日は曇りのお天気は適していません。
自家干し野菜は初日にどれだけ水分を除くことができるかがポイントです。
また晴れた日でも「前日は大雨だった」「前日まで雨の日が続いた」という日は当日晴れていても湿度が高いことが多く、避けた方がいいでしょう。

対策として最初に扇風機などで風をあててからから、室内の湿度の少ない場所で干します。

Q:雨に濡れてしまいました

せっかくの干し野菜、残念でしたね。
でも干し直したりせずに、取り込んで洗って調理に使ってください。

Q:干し野菜を作っていますが カビが発生しました

自家製はどうしても干しムラが出てしまい、特にピーマンなどくるんと丸まった中の部分が湿気たままで、そこからカビが発生します。裏返して風を当てたり、こまめに様子を見ながら干してください。
対策は干し始めにキッチンペーパーなどでしっかり水分を取ること、ある程度乾燥するまでは日に一度は裏返すなどこまめに様子を見ます。

Q:大根に斑点が出来ました。カビですか?

黒い斑点状のものや、白いふわふわしたものが生えているのはカビです。またカビ臭がすればカビです。
食べずに処分してください。

写真は茹で干し大根(茹でてから干す)を作った時にできた変色です。
聖護院大根を使ったのですが茹でること(加熱)で大根の成分が褐変しやすい、加えて普通の大根より甘みがありその成分が反応して褐変したようで、戻すときれいな色になりました。

聖護院大根 茹で干し 黒ずみ 2022年3月
聖護院大根 戻し 2022年3月

対策はやはり並べる前に十分水分をふきとる、初日は風を当てるなどするとカビの発生の確率が減ります。

Q: 戻す前に洗いますか?

干していた場所にもよりますが、ほこりなどが気になるようであればさっと洗ってもよいでしょう。
ただ洗いすぎると水溶性の栄養素を洗い流してしまいますので軽くさっと洗ってください。
また戻し汁は旨味が出ていますので捨てずに調理に使ってください。
(そのものの調理だけでなくおみそ汁の出汁に加えるなど)

室内干しの場合、私はほとんど洗わずに使っています。

Q:何日かかりますか?
野菜の種類や切った厚み、季節・温度・湿度、屋内か天日かで干しあがる日数は変わってきますが、真夏のカンカン照りなどでは2~3日で干し上がることもあります。
概ね1週間~10日でカラカラと乾燥してきます。

Q: どの野菜が簡単にできますか? 干すのが難しい野菜は?

最初にトライするのは輪切りの大根と人参がいいでしょう。切るのも簡単です。
キノコもすぐに干しあがります。かぼちゃも水分が少ないのでとてもうまく干し上がります。

Q 汁物には戻さずに入れていいのですか?

はい、そのまま入れて大丈夫ですが、戻るまで待ってから火にかけると旨味がじっくり溶け出てよりおいしく出来ます。
熱の通りもよくなりエネルギーの節約にもなります。

Q どんな料理に使えますか?

炊き込みご飯 汁物 シチュー サラダ 炒め物 グラタン クリーム煮など

Q エノキダケを干したて色が濃くなったがそれでよいのか、戻すとどれくらいの大きさになるか

干すと色が濃くなりますが大丈夫です。戻すと糸のような細さが少し太くなります。

干し野菜作りにはさらに秘めたるメリットが!

自家製干し野菜のメリットは日々の小さな行動が、大きな社会問題の解決に知らず知らずの内に貢献できたりすることです。

さらにもう一つ、どうしてもお伝えしたいことがあります。
干し野菜作りを始めてから自分自身の生活が変わってきたと思うのです。
毎日のサイクルが大きく変わったわけではありません。
でも、気分がすぐれない日でも、何かで落ち込んでしまった時も、「今朝はどれくらいになっているかな」と思い、朝「起きよう!」という気持ちになれること。

ただ干し上がっているのではなく、時間を超えてもしもの時にも命を未来へとつなぐ力が日々育まれている。
新しい命が生まれているように思い、干し上がっていくお野菜たちのキュートな姿から力をもらっている気がします。

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「自分で干し野菜を作れるんだ! でも実際に1人で始めるのははちょっと不安…」そんな風に思っている方、たくさんいますよね。

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